毎年恒例の75歳の後期高齢者歯科健診がつい最近始まりました。
数年前から①RSSTと言われる検査が追加され、そして今年からさらに②オーラルディアドコキネシスと言われるものが始まりました。
①RSST (repetitive saliva swallowing test)
日本語では反復唾液嚥下テストといいます。このテストは名前は難しいですが、いたって簡単なテストです。30秒間に何回、しっかり喉ボトケが上がって口の中の唾液を飲み込めるかのテストです。
②オーラルディアドコキネシス
これも、やっている事はいたって簡単です。
10秒間に何回「パ」や「カ」などの音をできるだけ多く発声できるかのテストです。
何のための検査か?
①RSST 喉ボトケがあがり嚥下が正常にできるか、つまり食べ物を飲み込んだ瞬間、気管、肺に入らないように気管の入り口にしっかり蓋を閉めることができるか知るためのテストです。
ちゃんと蓋が閉まらなければ、食べ物とそれに付着している細菌が気管、肺に入り肺炎のリスクが生じる
②オーラルディアドコキネシス 舌や口腔の筋肉が巧みに緻密に動くかどうか(歯医者は巧緻性と呼んでいますが)、つまり、食べ物を歯の上に載せたり、口腔内で前から後方に送ったり、食べ物が鼻に入らないように鼻と咽頭を閉鎖したりすることなどができるかの検査です。
誤嚥性肺炎との関係
誤嚥性肺炎とゴックンという飲み込み(嚥下)が関係するのは、あきらかだとおもいます。
ゴックンが上手くできなければ、つまり気管とそれにつながる肺に、食べ物とそれに付着した細菌が入らないように蓋をしめられなければ、気管、肺に入り誤嚥性肺炎になるリスクがたかくなります。
しかし、つい最近まで、咀嚼(食べ物を噛み砕いて口腔から喉に送る)が悪いと誤嚥性肺炎がおこりやすくなるということは、あまり認識されてこなかったですし、いまだに、多くの医療者が考えもしていないことだとおもいます。
これに関しては、公立能登病院の長谷歯科医師の研究があります。
食べ物を口腔内で適切に咀嚼しないと誤嚥性肺炎になりやすくなるという研究結果があります。
また、鶴見大学歯学部生理学の先生の研究でも、食べ物を口腔内で適切な大きさ、硬さにしないと正常に嚥下できないという研究結果もあります。
ということで、正常に安全に、食べ物を食べて栄養とするためには飲み込むチカラだけではなく、咀嚼によって食べ物を砕いて、できればペースト状にすることが大切になります。
今回の高齢者歯科健診では、以上の機能も評価して、後期高齢者の皆様に、幸せに暮らしていただこうという企画です。 高齢者歯科健診においては、歯周病の検査をすると「何でそんな検査、虫歯に関係あるがけ、虫歯さえなおればいいがや」と言われる方がおられたり、そしてRSSTの検査に至っては「何でこれが歯に関係あるがけ?」とお叱りを受けることもありますが、歯医者の存在意義は、虫歯を削ることが目的ではなく、口腔領域の健康を通して、患者さん、そして国民のみな様に幸せに人生をおくってもらうのが目的ですので、そのへんをご理解していただき、ご協力をおねがいいたします。