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金属を使わない歯科治療の落とし穴

メタルフリーの歯科治療(金属を使わない歯科治療)


ここ最近、金属を使わない歯科治療(歯医者はメタルフリーと呼んでいます)が日本において急激に広がりました。
以前は、保険が効かないものが多かったですが、最近では保険でできるメタルフリーの歯科治療もかなりの範囲でできるようになりました。
その理由には、大きく2つの要素があります。① CAD/CAM冠(キャドカムかん)が保険治療に導入された。

このCAD/CAM冠は、世間で広い分野でつかわれているキャドキャムの技術とおなじでコンピューターで支援された歯科の被せ物をつくる技術です。
これに関しては、以前詳しく述べましたのでそれを参照してください。
もう一つは、ファイバーを使う歯科治療が保険に導入されたことです。

これが、どう言うことかと言うと、歯の神経(歯科用語では歯髄’しずい’と読みます)をとったあと、最近までは、金属の土台を大きく削った後の歯の部分の補強のために入れていました。
この金属の土台の替わりに、ファイバーの芯を入れて、そのまわりをレジンと言われる樹脂系の物質で固めて土台とすることです。
つまり、ファイバー+レジンの土台とすることです。
では、金属の土台ではなくファイバー+レジンの土台とする利点はというと、
①最終的にかぶせるCAD/CAM冠やセラミックの人工歯がはずれにくくなること
②金属アレルギーがおこらないということ
③歯の神経をとると歯がもろくなり、噛むチカラでも歯が割れることを防ぐこと

日本人が歯を抜かなくてはならなくなる場合の多くは歯または歯の根っこがわれて、腫れたり痛くなっての抜歯です。
このファイバー+レジンにすると歯はわれにくくなります。逆に土台を金属にすると、きわめて割れやすくなります。
金属の土台より虫歯になりにくいなど、その他色々な理由がありますが、あまりにも多すぎるのでこれぐらいにしておきます。
ここで、最近まであまり注目されなかった大きな落とし穴があります。

先ほどファイバー+レジンの土台と言いましたが、このファイバーとレジンの接着の強さです。
最近までは、歯科接着学の理論で、ファイバーとレジンは強く接着しているはずだと考えられていましたが、実際にはほぼ接着してない場合もあることがわかりました。

これは、どう言うことかというと、色々な歯科材料メーカーが、ファイバーを歯科ディーラーを通じて歯科医院に供給していますが、メーカーのファイバーの製品により、ファイバーとレジンの接着力が全然ちがうということです。
ずっと前のことですが、私も実際に、診療後に歯科医院のスタッフも患者さんもいない診療室で実験してみました。歯科ディーラーから色々なメーカーのファイバーを集めて、ファイバーとレジンをメーカーの指示書通りに接着してみました。
中には全然接着しないファイバーも存在しました。

ということで、どこの歯科材料メーカーのファイバーを、採用するかということは、この歯科治療を成功させる上で、極めて重要だということがいえます。