2019年07月31日

血管性認知症

前回は、アルツハイマー型認知症とレビー小体認知症と歯科・食支援についての話しでしたが、今回は、四大認知症のもうひとつの血管性認知症と歯科・食支援についてです。

歯科・食支援そして摂食嚥下という観点から、血管性認知症を分けると、①皮質性血管性認知症と②皮質性血管性認知症そして③局所病変型認知症という分け方が、便利ですので、それに従って話しをします。

まず、血管性認知症とは、脳の中の血管の障害されておきたり、血流が悪くなることによっておきる認知症です。

①皮質性血管性認知症

皮質とは、大脳の外側というか表面にある大脳皮質を意味します。

そして、世間でよく言う脳梗塞がおきたと言う場合は、だいたいはこの皮質性血管性認知症を意味します。

脳梗塞(脳の中の血管が詰まる)がおきれば、それが即、血管性性認知症を意味するわけではありません。身体的な障害だけで、認知症がないこともあります。また、脳梗塞がおきたあとも、私の歯科医院で何にも無かったかのように歯科治療を受けておられる方も多いです。

大脳では、脳梗塞でできた病変の体積が50ml以下だと認知症になることは、ほとんどなく、梗塞した所が2箇所以上で、その足した体積が100ml以上だと認知症になる可能性がかなり高くなるといわれています。

認知症の症状としては、その脳梗塞がおきた、脳の場所にお応じた症状(歯医者は巣症状と呼んでいます)がでます。特に、前頭葉と側頭葉が障害された時に起きやすいと言われています。

脳梗塞がおきる場所によって症状はかなり違いますが、そのなかでもある程度、共通している点は、歯科・食支援という観点からは実行機能障害(料理を作る場合、段取りだてて、料理をつくることができなくなります)と注意障害(食べる時は、色々な事に注意を配分して我々は無意識にたべているけど、例えば、テレビが気になったり、揺れるカーテンが気になったりして食べることができなくなります)です。

また認知症とは少し離れますが、運動機能の障害を持っている場合もあり、喉や口腔の筋肉が動きにくくなって食べれない、食べにくいということもおきることがあります。

②皮質性血管性認知症(脳循環障害タイプと呼ぶ人もいます)

大脳皮質の下というか内側に問題がでておきる認知症です。

この部分には、元々血管がすくなく、またその少ない血管も細いものばかりです。

摂食嚥下の分野では、最近まで、あまり注目されていませんでした。というか、今もあまり注目されていませんが、一部の歯科大学・歯学部の研究者が注目しています。

代表的なものが、ビンスワンガー病と多発性ラクナ梗塞です。

ビンスワンガー病

アガサクリスティーの小説の中の名探偵アルキュールポアロが「私の灰色の脳細胞が、、、(原文では、my grey matter)」と会話の端々に言っていましたが,これは大脳皮質の灰白質(かいはくしつ,神経細胞のあつまり)を意味しているのだとおもいます。アルキュールポアロは(つまり英語を母国語とする人たちは)知性のことを、大脳皮質と理解しているようです。

そして、その内側が白質(神経線維のあつまり)があります。

この白質に血流の循環が悪くなり神経線維が変性するのが、白質病変です。

これにより認知症がおこります。

世間が言う脳梗塞(皮質性血管性認知症)は、梗塞がおきて発症しますが、この白質病変は、徐々におきることもあるものです。

多発性ラクナ梗塞

ラクナという単語はラテン語で「小さな空洞」という意味です。

昔の学者が、解剖した脳(の断面の深い所、線条体と言われる所の付近)に小さい窪みが、たくさんあったことからこのラクナ梗塞という名前がつけられました。

身体的な目だった症状がないこともおおいものです。

この、多発性ラクナ梗塞により認知症がおこることがあります。

 

①の皮質性血管性認知症と、

②の皮質性血管性認知症とでは、歯科的、食支援・摂食嚥下的に、対応の仕方が全然違ってきます。

問題は②の皮質性血管性認知症です。

歯科的、食支援・摂食嚥下的にたいせつなことは、

この皮質性血管性認知症は、レビー小体認知症のように、誤嚥を起こしやすい認知症であるということです。

見た目は、軽度にみえても、本格的な嚥下障害を伴う可能性があるのが、この皮質性血管性認知症です。

逆に、皮質性血管性認知症は、症状は様々で、一見、見た目は重症でも、嚥下は、色々な工夫・食支援をすれば、なんとか食べれることがおおいです。

③局在病変型認知症

視床や海馬など、認知機能に関わる部分が 、梗塞をおこすと、そこだけで認知症をおこします。頻度は、あまりありません。

例えば、手や足などの末端から感覚を伝える神経の線維が脳の視床で神経を乗り換えますが、そこの視床で梗塞をおこすと、傾眠傾向となったり、健忘 感情失禁をおこしやすくなります。

ただ、この局在病変型認知症は、稀といわれています。歯科的、食支援・摂食嚥下の分野では、あまり話題には上りません。

 

蛇足

日本では、あまり聞かないですが、血管性認知症に使われる薬、ニセルゴリンと言う薬が、摂食嚥下機能を向上させるという論文があります。

Casiano V,An unusual  adverse event from a common medication in an individual with dementia.J Am Geriatr Soc 62:2223-2224 2014