顎の骨折と歯科口腔外科の重要性
やまもと歯科・矯正歯科医院の院長、山本です。
当院にも稀に顎の骨折で来院される患者さんがいらっしゃいます。突然のことで驚かれたり、どこへ行けばいいのか分からず不安に思われる方も多いのではないでしょうか。
診断から専門医へのご紹介
当院では顎の骨折の診断は可能ですが、一般的な歯科クリニックでは治療まで行うことはできません。そのため、診断後は速やかに病院の歯科口腔外科へご紹介させていただいております。
ここで重要なのは、「整形外科」ではなく「歯科口腔外科」へご紹介することです。一般の整形外科では顎の骨折は専門外となることが多く、適切な治療が受けられない可能性があります。
歯科口腔外科の専門性
私自身の経験からも、歯科口腔外科の専門性がいかに重要かを痛感しています。
かつて、私は歯科大学の大学病院で、整形外科で顎の治療を受けたものの、かみ合わせが大きくずれてしまい、最終的に歯科大学の口腔外科で再度顎の骨折をさせ、プレートで固定する手術を数多く見てきました。口腔外科では、まず顎間固定(がっかんこてい)といって、かみ合わせを正しい位置で固定した後にチタンプレートで骨を固定します。この順序が逆になると、かみ合わせがずれてしまい、正常な機能を取り戻すことが難しくなってしまうのです。
私が口腔外科で臨床研修をしていた頃、手術室でこんな話を聞いたことがあります。歯学部には口腔外科Ⅰ、口腔外科Ⅱ、外科と3つの講座があり、ある時、Ⅱ外科の助手がⅠ外科の講師をからかう場面がありました。Ⅰ外科の講師が顎間固定の前にプレート固定をしてしまい、かみ合わせが合わずに、その場で手術をやり直すことになったという話です。彼らはその失敗談を笑い話にしていましたが、これは歯科口腔外科における治療順序の重要性を改めて示すエピソードでもあります。
当時の出来事から40年近くが経ち、もう時効なので言いますが、その時のⅡ外科の若い先生が講師に昇格した時、Ⅰ外科の年配の先生が「わしゃまだ助手やぞ」と冗談交じりに不満を漏らしていたのを覚えています。
最後に
このように、顎の骨折は専門的な知識と技術が必要な分野です。もし顎をぶつけたり、顎に違和感がある場合は、迷わず当院にご相談ください。適切な診断を行い、必要であれば速やかに専門の歯科口腔外科をご紹介させていただきます。
皆さんの健康と安心のために、これからも地域医療に貢献できるよう努めてまいります。