AIと歯科医療:10年前の予測と、やまもと歯科・矯正歯科医院の視点
10年ほど前、「AIが進化すれば、将来なくなる職業」というリストに、歯科医師が挙げられていたことを覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。当時、メディアや週刊誌で盛んに取り上げられ、驚いた方も多かったのではないでしょうか。
私たち歯科医師も、この話題には非常に複雑な感情を抱いていました。特に、「AIで本当に子どもの歯科治療ができるのか?」という疑問は、多くの歯科医師が共通して感じていたことです。
例えば、治療中にじっとしていられないお子さん、少しの刺激で動いてしまう患者さん、あるいは予期せぬ反応を示す患者さんなど、歯科医療の現場は常に予測不可能な状況の連続です。
精密な治療を要する歯科医療において、患者さんの体調や精神状態を敏感に察知し、それに応じて治療方法を柔軟に変える必要性は言うまでもありません。
AIがどんなに進歩しても、感情を持つ人間ならではの機微を読み取り、信頼関係を築きながら治療を進めることが歯科治療ですので、なくなる職業のトップというのは、当時の私たちには想像もつかないことでした。まるで、なくなる職業とは正反対の場所にあるのが歯科医療だとさえ感じていたものです。
最近では、歯科医師が「なくなる職業」のトップリストから外れるようになり、少しは現実的な議論になってきたことに安心しています。これは、AIの可能性を理解しつつも、人間の専門性、特に共感力や適応能力が不可欠な分野の重要性が再認識されてきた証拠ではないでしょうか。
やまもと歯科・矯正歯科医院では、AIが提供する最新技術、例えば診断支援ツールや効率化のためのシステムなどには積極的に注目し、活用できる部分は取り入れていきたいと考えています。
しかし、それ以上に大切にしているのは、患者さん一人ひとりの声に耳を傾け、不安に寄り添い、安心できる治療を提供することです。
どんなにテクノロジーが進化しても、私たちの手から患者さんへの温かいケア、そして培ってきた経験と技術が、歯科医療の核であり続けると信じています。
これからも、地域のみなさまのお口の健康を守るため、日々の診療に真摯に取り組んでまいります。