餅と窒息事故
この正月休みにテレビのニュースを見ていると、やはり今年も餅を喉に詰まらせて窒息事故で亡くなられる方います。
実際には、報道されないものもたくさんあるのではないかと思っています。
訪問歯科診療に行くと12月によく言われることがあります。
それは訪問歯科診療を受けている患者さんの奥様や、娘さんから餅を食べさせてあげたいということです。
私の歯医者としての答えは、「それはやめた方がいいですよ」ということです。
私は餅はかなり危険な食べ物だと思っています。
命を賭けてまで食べる食品ではないと思っています。
訪問歯科を受けておられる方なので、だいたいは、嚥下機能が衰えて、認知機能も衰えています。
そして歩行などの身体機能も衰えています。
歯医者として訪問歯科診療に行っていますので、口腔内は入れ歯を入れておられるか、歯が欠損して無くなっている場合がほとんどです。(臼歯が上下的に反対側の顎の臼歯としっかり噛むところがない、またあっても1ヶ所ぐらい)
奥歯での噛み合わせがうまくいかない場合、窒息事故がおきる可能性が高くなります。
餅は付着性が強く、口腔や咽頭にくっつきやすいです。(嚥下では食品の、付着性、凝集性、硬さが重要となります)
もともと奥歯の噛み合わせが不安定な上に、餅という付着性が極めて高い食品を食べようとすると喉に引っかかりやすくなります。
更に認知症が加わると窒息事故の可能性があがります。
認知症の場合、色々な要素で窒息事故が起きやすくなりますが、その中で一番問題となるのは、一口量の調整がうまくできなくなると言われています。
大きすぎる量の食べ物の塊を飲み込もうとすると、失敗して喉につまります。
先月の暮に消費者庁より発表されたことによると
毎年65歳以上の食品の窒息死亡事故は3500人、そのうち80歳以上が2500人以上といことです。
今回初めて、その男女比も調査されました。
男性の方が女性より2.6倍死亡者が多かったという結果でした。(65歳以上の男女比は44:56で男性の方が少ないにもかかわらず)
消費者庁の発表とその発表の中で昭和大学歯学部の名誉教授の向井美惠先生はいくつかのアドバイスをされていましたが、男女比にかんしては何もコメントされてなかったですが、
高齢になると男性は喉頭の位置が若い時と比べると下がる為(女性とくらべるとおおきいのでなが年の重力のためとか、石灰化するためとかといわれてます)だと私は解釈しました。
喉頭の位置が下がっても下がらなくても、嚥下するその瞬間、一定の高さまで喉頭の位置つまり下顎の直下あたりまで行かないとカラダの構造上嚥下できないからです。
この消費者庁の発表でも、窒息死亡事故は1月に一番おおいとのこいです。
そして、それは正月の餅を高齢者が喉につまらせるのが大きな要因と言うことなので、
餅は、大多数の高齢者にとっては、命をかけてまで食べる食品ではないです。消
費者庁のアドバイスを間違って解釈しないようにしていただきたいことがあります。
それは、
万一、餅を食べる場合でも、口の中の餅をお茶と一緒にたべようなんて考えないでください。
口腔内に2つの物性のものが存在するとかえって危険となります。
それとは違い、消費者庁、歯科の名誉教授の向井先生がいっておられるのは、
お茶と餅を別々に(口腔内にこの2つのものが同時にあることがない)交互に嚥下することは有効です。(歯医者は交互嚥下とよんでいます)