歯周病の原因菌
世界の歯科大学、デンタルスクールで真剣に歯周病の原因菌について調べだしたのが1970代でした。
私が大学生だったのは1980年代だったので、歯周病原因菌について研究しだして、それほど時間が経ってないころです。
大学の歯周病の授業は、教授先生が行っておられました。
歯周病の原因について教科書に出ていることを説明されていました。教科書は大体、最新のことは載っておらず、ひと昔前のだれも異論を言わない事だけが載っているので歯周病の原因菌の名前までは載っていませんでした。したがって古典的な内容でした。
歯周病学の定期試験の出題者は、教授先生の授業を一度も聞いたことがない講師の先生でした。(その講師の先生の研究は歯周病の細菌についてでした。)
そして問題は2問出題され、その中の1問は、歯周病の原因菌の名前を書くものでした。
部活の関係で歯周病学の教室に、親しい先生が3名おられて、その中の1人がその出題者でした。
試験の後に、部活の用事でその先生の研究室にいって話をしていると、話が試験のことになって
講師の先生が「山本、試験はどうだった?」と言われ
私「絶不調です」と答えると
全員の答案の束を取り出して
私の書いた答案がでるまで、ペラペラをめくり始めました。
そのペラペラとめくる答案を私が見ていると、ほぼすべての学生が0点でした。
そして私の答案がめくられると、細菌名が2つ書かれていて、何とか合格レベルに達していました。
私が書いたのは「アクチノマイセス」と「フゾバクテリウム」でした。これが当時、歯周病原因菌として研究されていた細菌です。
私の友人は、「細菌名まで習ってないよ」という人がほとんどでした。
数名の学生が点数をとれたのは、公式の教授先生の授業ではなく、何かの特別公演で
でてきた内容だったからです。
私も偶然その講義を覚えていて書くことができました。
ということで、その当時は歯周病の原因菌については、歯周病や細菌学、衛生学の研究者以外はそのレベルでした。
現在は、PG菌がメインの歯周病の原因菌と言われています。
しかし、マウスを使った実験では、この細菌、PG菌単独では、歯周病をおこさせることはできませんでした。
ヒトでもその他色々なエビデンスから同様なことが言えると考えられています。
何が必要かというと、生まれてからの、口腔に定着した細菌のあつまりが必要です。
つまり口腔細菌叢(そう)がひつようです。叢とは、くさむらという意味です。
この口腔細菌叢にPG菌が加わることにより歯垢・プラークが、質的に変化をして、さらに量的な変化を起こすと考えられています。
また、このPG菌にある種のレンサ球菌が同時に存在すると、歯槽骨の破壊を促す、つまり歯がぐらついて抜けやすくなります。
このPG菌が歯周病のキーストーンとなる細菌だと考えられています。そのキーストーンを引っぱり出すと、全体がくずれて成り立たなくなります。
しかし、まだまだわからないことが多く、分子レベル、遺伝子レベルの研究がまだまだ必要な分野となっています。(分子レベルの研究で夫婦間感染も多々あるこがわかっていますが)