2019年07月28日

最近、歯科分野で研究が盛んな分野が、食支援です。

食支援の対象者は多くの場合、高齢者で脳梗塞などの脳血管障害の後遺症を持った方、認知症の方、神経筋疾患の方、また小児で難病を持っておられる方など、数え切れないぐらいありますが、ここでは、認知症について取り上げます。

認知症の患者さんの食支援

まず認知症には、いろいろありますが四大認知症について

それぞれの認知症に応じて、対処の仕方が変わってくるからです。

①アルツハイマー型認知症

( 脳の神経細胞の脱落、神経伝達物質の異常そして大脳皮質の萎縮)

アルツハイマー型認知症は、食べるという行為に問題(食べる行為の障害)がでることが多い認知症です。

喉の奥で飲み込むという動作、嚥下反射は、比較的アルツハイマー型認知症の最後のほうまで保たれています。

どういうことかというと、喉に適切な大きさ、形態、量のものが入れば、嚥下反射でゴックンとのみこんでくれるということです。問題は、いろいろな理由で喉までいかないということです。

それには、なかなか食べようとしない、つまり、食べものを食べものとして認知できない場合もありますし、食事場面で、食事の時間だと分からなかったりです。

また、途中でたべるのをやめたり、その他色々なことがあります。

何とか、食べものが口の中にはいってからも、咀嚼の仕方や口から喉におくりこみかたが、稚拙になり、赤ちゃんの離乳食期状態になったりして、口の中に食べものをためこんだり、吐き出したり、色々な問題がおきます。これを歯科用語では、口腔期に問題があるといいます。

問題を明確にして、解決していかなければなりません。

アルツハイマー型認知症の患者は、わりあい早期に、口腔内の清潔に関する意識が薄れて、歯磨きが、しっかりできなくなります。したがって,むし歯が多くできたり、歯周病が悪化して、それが原因でたべれないこともあります。

また即時記憶も弱くなりますにで、口の中のどこの部分を歯磨きしていたかわからなくなり、右だけ磨いたとか、途中で歯磨きをやめてしまう場合もあったりします。

アルツハイマー型認知の特徴のひとつに視空間認知障害というのがあり、どこに歯ブラシがあたって、どの辺を磨いてるか、歯ブラシが、歯と歯ぐきの境目をしっかり捉えているかわからなくなるというのもあります。

アルツハイマー型認知症の診断にも、この視空間認知をみる、逆キツネを手でつくらせるテストや、時計を描かせるテストもあり、かなり特徴的です。

箸など食具は、赤いものがいいといわれています。

青や緑の色を感知することが、低下して、赤色に関しては、劣ろえないからです。

柄、模様や絵が入った皿やトレーなどは、食べることへの注意力を低下させるので避けられます。

 

②レビー小体認知症

(レビー小体という物質が脳内にたまる病気、レビー小体が脳幹にたまればパーキンソン病ということになります)

わりあい早期から、本格的に誤嚥する認知症です。

歯科的には、特に注意が必要な患者さんです。

脳の視覚に関係する後頭葉の症状がおきる、つまり、幻視が特徴のひとつです。

ご飯の上のふりかけや、ゴマが虫に見えたりして、食べれなくなることもあります。

35年ぐらい前、私が歯科大学生のころ、明石家さんまさんのギャグのひとつに

さんまさんのボケたおじいさんが、さんまさんに、友だちを紹介してくれて、おじいさんが、友だちと言っていた人は、(お湯をいれる)ポットだったというのがありました。今の基準から考えると、明石家さんまさんのおじいさんは、レビー小体認知症ということになるのでしょうか。

最近では、レビー小体認知症の診断の為にパレイドリアテストという人や動物に見えるかもしれない植物などを見せて答えさせる視覚のテストもあります。

歯科的に問題になるのは、唾液が口の中に多くなり、よだれがでやすくなることです。また、自律神経に問題が起きるので、低血圧になりがちで、とくに歯科治療時には、椅子をおこして、つまりカラダを起こそうとすると、起立性低血圧がおきる可能性があり、意識をなくしたりすることも可能性としてはあります。また食事性低血圧(食事中、または食後に意識が遠のいたり意識がなくなったりします)もおきます。

また、ほとんどの人が便秘で、それが元で食欲がないひともいます。

うつ症状にもなりやすく、それにより食欲がなくなったりします。

初期から、嗅覚低下がおきます。それで食欲が普通の人よりさがります。(アルツハイマー型認知症でも、嗅覚低下はおきますが、レビー小体認知症の場合は、脳の嗅覚の細胞に直接ダメージを与えるもので、アルツハイマー型とは、メカニズムがちがうといわれています)、

姿勢が傾斜してスムーズに食べれないということもあります。

レビー小体型認知症においては、アルツハイマー型認知症より早く視空間認知障害がでるといわれています。これは、入れ歯を丁寧に洗ったり、口腔内を丁寧に清掃することがむずかしくなることを意味していますし、

レビー小体型認知症やパーキンソン病に特有な、手の細かな動きが苦手となり、うまく歯ブラシを操作できないとか、箸やフォーク、スプーンなどの食具を口にもっていくのが正確にできなくなります。

特に問題になるのは、薬に対する反応が、過剰にでることです。ある日を境に急に食べれなくなったと思ったら抗精神病薬を新たに飲み始めたりということがあります。

その他レム睡眠行動障害(寝ている時に、夢の中でおきている事に応じて、実際に手足をバタバタさせたり大声を出したりします。)があります。

実際にこのことにより、その患者さん自身や、周りのひとに、危害がおよぶようなら薬を飲むようになるそうです。

この時の薬が食欲や、嚥下に悪い影響を与えることもあります。

舌の動きもかなり悪くなり(舌が細かくふるえたりすることもあります)、誤嚥しやすいですので、調子がいい時(オン状態の時)にたべることが重要となります。

嚥下反射を起こさせるサブスタンスP(脳内のドパミンという物質が減るとサブスタンスPも一緒に減る為、そしてレビー小体認知症ではドパミンが減りやすい)という物質も、減りそれによっても誤嚥しやすくなります。

 

アルツハイマー型認知症の患者さんにたいする食支援を、レビー小体認知症におこなうと、大変なことになります。つまり、誤嚥や、窒息がおきやすくなります。

ただ、以上のことは、一般的なことですので、

一番大切なのは、それぞれの患者さんに、個別対応することですので、参考程度にする、または、前もって対応方針を、おおざっぱに決めるのに役にたちます。

ということで、今回は、四大認知症のうちの二つについてでした。

残りの二つに関しては、次回以降に。